LINEで送る このページを Google Bookmarks に追加

Menu 令和(思うに至る)



    2019年、新天皇が即位され、新しく元号も変わることになり、今までの平成が終わりました。
    新しい時代がどの様な時代になるのかは分かりませんが、わたくしの様な一私人は、より良い充実した時代になって欲しいという事を想うだけですが、一生にそう何度も無い、「改元」と「新帝即位」と言う御目出度い場にあるのですから、それを祝うメニューを食べてみたいと思いました。


    天皇家の饗宴(秋偲会)表紙に鳳凰を添えて。




    明治以降、フランス料理が入って来てから大正天皇の即位における饗宴の儀、昭和天皇の即位における饗宴の儀は、かの有名な秋山徳蔵氏らが中心になってフランス料理での献立が組み立てられましたが、平成における新帝の即位における饗宴の儀はそれまでとは違い和食での献立とばりました。
    令和の即位における饗宴の儀がどのような形になるのかは、未だ分からないですが、令和のお祝いとして、「大正」「昭和」「平成」の三つの時代のメニューからの選んだメニューを食べてみたいと思い、何時もお世話になっている木場のアタゴールの曾村氏にお願いをして作って頂く事にしました。
    とは言え、只、令和をお祝いしたいメニューを3つの時代からと言っても作る方は大変な事なので、ある程度食べ手の側も輪郭を作る必要があります。
    と言う事で、考えた【構想】が以下のくだり。




    ”令和” メニュー案
    (令和01年5月某日)

    ザリガニのポタージュ(大正の饗宴の儀から)

    ウズラのショーフロワ(大正・昭和の饗宴の儀から)

    牛肉のアスパラ巻き(平成の饗宴の儀から)

    セロリを使った一品(大正・昭和の饗宴の儀から)

    ライスプディング(令和へ向けて)


    上記の内容をベースにアレンジをお願い致しました。

Menu Reiwa 具体的なメニューの構想の趣旨


    << 大正の饗宴の儀・昭和の饗宴の儀・平成の饗宴の儀 >> のメニューについてはこちらを参照 

    「大正の饗宴の儀」と「昭和の饗宴の儀」は、かの秋山徳蔵氏がメニューの作成に大きな役割を果たしたところ、メニュー相互に共通の要素を見て取ることができます。
    「すっぽん」「鱒」「うずら」「七面鳥」「牛肉」「セロリ」が使われており、「スッポンのコンソメ」「ウズラのベルビュー」は内容まで同じであり、恐らく「セロリ」も同じでは無かったのか?と推測されます。
    また、メインに「七面鳥」を持って来ているのも同じですが、大正の饗宴の儀が「七面鳥とウズラ」の二つを一緒にメインにしているのに対して、昭和の饗宴の儀は「七面鳥」と一種類だけになっている相違点は出ていますが、これも大正期と昭和期で同じ調理法であった可能性は高いでしょう。
    他方、「平成の饗宴の儀」は和食による構成に変わった事もあり、従来の大正期・昭和期とはメニューの趣も構成も大きく変化することになりました。
    食材としての変化ももちろんの事ですが、宮中所縁の「鯛」や「鮎」がメニューに登場しているのも平成期の特徴でありましょう。
    とはいえ、フランス料理のメニューとして考えた際に、平成期のメニューから、(アレンジをするにしても)引用をして登場させる事ができるのは「牛肉のアスパラ巻き」が穏当だと思われるので、これを平成期から頂戴する事が始めの軸として決まりました。
    次に、大正期・昭和期のメニューの中から何を選ぶかと言う事になりましたが、やはり、日本で初めてフランス料理による饗宴の儀が行われる際のエピソードとして有名な”ザリガニのポタージュ”は是非とも組み入れたいと思いました。
    本来ならば、「スッポンのコンソメ」の方が格式も高い気がしましたが、ここは秋山徳蔵氏に敬意を表するところだろうと思った次第でもあります。
    そして、残りの「うずら」「七面鳥」「鱒」「セロリ」のうち、「セロリ」は是非とも組み入れてみたいと考えました。他の野菜でもよさそうなものなのに何故にセロリが選ばれているのかが非常に興味を掻き立てました。
    さて、順当に考えると「牛肉」を選んでいる中でのバランスを考えると、魚料理として「鱒」を選択するのが理に適った感じがしましたが、「鱒の外交官風」はソースに甲殻類を使う事もあり、「ザリガニのポタージュ」と重複してしまうので、ここは鱒を外すことにして、「ウズラ」か「七面鳥」かで悩む事にしました。
    「うずら」も「七面鳥」もどちらかと言えば淡白な味ではあり、付け合わせのソースで味の輪郭が決まる部分もあり、共通な要素を含むが、個人的にショーフロワが好きと言う事もあって、今回のメニューでは「ウズラ」を組みこんでもらう事として、”令和メニュー”の大体の骨組みを決めたのだった。

    最後に、デセールを考える番になりました。
    昭和の饗宴の儀の際に、デセールが”プディング 皇帝風(Pudding a la Imperiale) ”となっています。
    プディングを使った有名なものとしては幾つかありますが、お米を使ったライスプディングの場合には、”Riz Imperatrice”と言う古典的なお菓子があって、ナポレオン三世の皇后であるウージェニー妃を表わすとされています。
    饗宴の儀のメニューを考えた秋山氏が、日本にちなんで「米」でデセールを作ることを考えた事は無かっただろうか?と考えてみたりもしました。
    が……、上記の様に、ライスプディングを作る場合にimperatriceはウージェニー妃に関連して「皇后風」と言う意味合いが先に連想される(「皇帝風」と言う意味がないわけではない)可能性が高いので、秋山氏はバッティングを避ける意味で「皇帝風」「帝国風」と言う意味合いを前面に出せるように、単純に”Pudding”としたのかと思ったのでした。
    そういう意味で、ライスプディングで「皇帝風」と言うのはある意味空席になっているとも言えるだろうし、”Imperatrice”を使うのでなく、秋山氏と同様に”Imperiale”と言う意味を込めてライスプディングの形にしたらウージェニー妃にも饗宴の儀にもバッティングしないな、と言う事を思いついたので、デセールにライスプディングをお願いする事にしたのでした。
    最後に出来上がったこの素案を、何時ものように a ta guele の支配人市川さんにも目を通して頂いて、最終的な内容や仕様は曾村シェフにお任せする運びとなりました。