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Menu Marianne[副題:民衆を導く自由の女神](思うに至る)



    2018年の12月に、【カールの戴冠】にちなんだメニューをアタゴール(A ta guele)の曾村譲司氏に作って頂いた際、帰り際に料理の重要な一部分でもあった【ローリエの冠】を同席した方にプレゼントしてくださいました。
    その時に、この余りに見事な「冠」を、何とかこれを組み込んでメニューを一つ作ろうと思ったのでもありました。
    「ローリエの冠」と言えば、ローマ皇帝の象徴でもありますが、同時に自由の女神像にかぶせられている「冠」でもあります。
    【自由の女神】は、アメリカの映像と共に流される事もあって、何かアメリカ合衆国の専売特許の様なイメージがありますが、実はこの【自由の女神】はフランスを象徴する女神様なのです。
    元々は、1792年のフランス革命の際における革命の所産としての「自由」を象徴するものとして擬人化されたものであり、現在ではフランスの国章としての地位を占めるまでになりました。
    (アメリカの自由の女神像はアメリカ独立100周年を祝って1886年に本家フランスから贈られたもの)

    民衆を導く自由の女神 (ウジェーヌ=ドラクロワ)




    フランスの国章である「自由の女神(marianne:マリアンヌ)」は、フランス大使館のマークや、最近のフランスの催しものにはお馴染みになりつつありますが、まだまだ馴染みは薄く、一般の日本人的にはこちらの「絵画」の自由の女神の方がお馴染みでしょう。
    こちらは、1792年のフランス革命では無く、1830年のフランス七月革命の際に描かれた【民衆を導く自由の女神像】。
    今のフランス国旗となった三色旗を片手に、1792年の革命の象徴でもある山岳帽を被った女神が、復活したブルボン朝を打倒して「自由」を獲得するために奮闘する様子を描いたセンセーショナルな絵画です。

    1792年7月14日のバスティーユ襲撃から始まるフランス革命、ロベスピエールの追われた1794年7月27日のテルミドールの反動、ブルボン復古王政に対する1830年7月27日からの7月革命と、実はフランスの7月には3つの革命が起きていたのです。
    【パリ祭】は、7月14日のフランスのお祝いでもありますが、ワタクシは、この7月の【革命】と【自由の女神】と言う事をモチーフにフランス料理のメニューを組み立ててみようと考えたのでした。




    ”マリアンヌ(Marianne)” メニュー案
    (令和01年07月某日)

    "Consomme d'Orleans"(1830年の七月革命でブルボン家に変わってフランス国王になったオルレアン家を表すものとして)

    "Homard Thermidor aux valencay"(テルミドールの反動を表すものとして)

    "Emince Marianne"(【自由の女神:マリアンヌ】を表すものとして)

    "Finace"(7月革命の本質はブルジョア革命であるとも言われる事を表わすものとして)


    上記の内容をベースにアレンジをお願い致しました。

Menu マリアンヌ 具体的なメニューの構想の趣旨


    7月には”3つの革命が”と言う事をモチーフにしての「自由の女神」=「マリアンヌ」

    先ずは、字義通りの1830年の七月革命を表すものとして「Consomme d'Orlean」を
    7月革命では、ブルボン家の復古王政が余りの反動的な政策を取ったがゆえに、自由主義的なオルレアン家のルイ=フィリップが国王に即位します。
    このオルレアン家が掲げていた旗が”三色旗”
    そんな事から、フランス料理にはこの三色旗をモチーフにした「コンソメオルレアン」が存在しますので、これを使わない手は無いなと思ったのでした。

    また、2つ目は、テルミドールの反動で有名な「Homard Thermidor」
    テルミドールとは、フランス革命で制定された革命暦に伴う7月の呼び名(11月○○日となる)ですが、フランス革命で国王ルイ16世や王妃マリーアントワネット他、多くの人物を断頭台に送ったジャコバン派のロベスピエールがクーデターで失脚して自身もその露と消えた事をもって一つの革命が成就したと言う理解からか、本家フランスではパリ祭を祝う際の名物料理として定着した代物。
    オマール(Homard)以外にも舌平目(sole)などの料理もあったようですが、舌平目はまた他の機会の登場を考えるとして、今回はポピュラーな方を選択。

    メインは、今回の主題でもあり、副題でもある「自由の女神」を表す「Emince Marianne」
    流石にフランスを表す国章としての「自由の女神」ゆえ幾つも料理はあり、当初は「Potage Marianne」としてメニューの最初の導入にしようかと悩みましたが、そうするとメインで何を選ぶべきかと言う点でなかなか誘惑が多いのと、何気に【魚料理】ばっかりになってしまう気がしたこともあって、落ち着いたのが”エマンセ”と言う名を持つ一品。

    そして、最後のデセール
    これも、色々と試行した挙句、「Finace」に
    7月革命がブルジョア革命と言われた事も考えて、この「Finance(金融)」と言う要素は、前菜などで「Foie gras Finance」やメイン筋で「Vol-au-vent Financiere」などでの登場も考えましたが、やはり隠れた存在を「メイン」に持ってくるには少々インパクトが弱い話でもあるので、やはりデセールで扱った方が良いだろうと。
    実は、もう一つデセールで考えていたのが「Soffule d'Orlean」。これは、文字通りオルレアン家のスフレと言う事になりますが、やはり最後で登場すると言うよりは、「三色旗」での登場の方が華があるよなと言う事で(料理として非常に興味はあったけれども)今回は見送る事にして、「Finance」をデセールとすることに決めたのでした。

    何時もの如く、相当わがままな”企画”と言うか【お願い】と言うかではありましたが、”美味しいモノを食べたい”+[何か含意のあるもの]を考える事が楽しくもありだったので、(迷惑を顧みず)、 後は、この素案を、a ta guele の支配人市川さんに目を通して頂いて、最終的な内容や仕様は曾村シェフにお任せする運びとなりました。