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池袋:2019年05月18日:立教大学第一食堂


    以前、立教大学の学食(立教大学第一食堂)に行って、学生食堂とは思えないレベルの高さに感嘆したのだが、その後、縁遠くなかなか池袋界隈に行く事はなかった。
    学食巡りなどもやったらきっと楽しいとは思うが、なかなかにフランス料理や洋食に関連する様なメニューを扱っているところばかりでも無いので、足は自然と遠のくのだが、久しぶりに立教大学の「カニクリームコロッケ」を食べたいと言う想いが湧き上がり、そうなると居ても立っても居られない性分もあり、何とか時間と場所のやりくりを付けて池袋へと向かったのだった。

    (左)立教大学正門 (中央)(右)第一食堂入口



    立教大学の他の大学に入った事なども無いので比較の仕様もないのだが、この大学の中に入ると、時間が止まっているかの様な感じを覚える。
    イギリス風の緑と、煉瓦造りの建物がそう言う効果があるとは思わないが、この緑の道を進んで蔦の絡んだ正面の建物をみると、何やら不思議な気持ちに誘われてしまう。
    以前、訪れたのが2014年であるから、それから5年……当たり前なのか、あるいはそうではないのか、何も変わらない様な大学の構内であった。

    (左)食券(中央)手作りカニクリームコロッケ定食@420円(右)食堂の椅子(立教のマークが付いている)




    行った時間も時間だったせいか、既に大半のものは売切れていた。
    そうだろう、あれだけ美味しい定食であればそれもやむなし、と思って、彼の日の素晴らしい定食を探すと……それは、売り切れずに残っていて、あたかも自分を待っていてくれたかの様にさえ思える能天気な自分がいて少し微笑ましくもあった。
    「この食券を買って、配膳の列に並べば、また5年前の様な幸せの一時を味わえるに違いない」
    それは、本当に無邪気な確信ですらあった。
    おもむろに食券のボタンを押して、流行る気持ちを押さえつつ、席とりをして、定食のコーナーに並ぶ。
    周りを見渡すと、学生さん達や、父兄、大学関係者と思わしき様々な人達が並んでいたが、売れ筋を見ていると「チキンカツカレー」が良く出ている様な雰囲気であって、自分の頼んだ「カニクリームコロッケ」はなかなか出ないのであろうか、食券を渡してから、その場で揚げてくれる流れであった。
    厨房で揚げ物の鍋に入れられるカニクリームコロッケ……パチパチと言う音を聞きながら、まだかなまだかなと思いつつ、チキンカレーの人達に先を越されていくのを感じると、何やら水戸黄門の「あ~とから来た~のに追~~いこされ~~♪」と言う音楽がリフレインもしたが、ただただカニクリームコロッケが揚がって来るのを江戸からの早飛脚を待つ赤穂城中の中の人の如く待っていたのであった。
    「カニクリームコロッケ上がりました~」と言う声と共に、渡された白いお皿……これをテーブルに運んで箸を入れれば、再び桃源郷へと参れる……そんな気持ちを旨に席とりをしてあったテーブルへと急いだ。

    (左)2019年のカニクリームコロッケ(中央)断面




    席に着き、写真撮影も終わり、「さぁ素晴らしいカニクリームコロッケ♪」と箸を入れたところ、何かが違う……?
    「ん?」「5年前はもう少し、箸を入れるのに力が要らなかった様な……」
    期待を胸に万象繰り合わせて池袋まで来て求めたカニクリームコロッケは、5年の歳月を経て、何と薄い厚さになってしまっていたのだろうか。
    厚みが薄くなってしまったせいで、上手く箸が入らなかったのであった。

    (左)2014年の食券(中央)2014年のカニクリームコロッケ




    中を割ってみると、クリームは入ってはいるが、赤い蟹の姿らしきものは皆目見当たらなかった。
    たまたま、自分のだけがそうだった……と言う事もあるかもしれないが、微妙に蟹の匂いがするクリームが綺麗に揚がった黄金色のワラジから顔を見せているのであった。
    ここで、さっき並んでいる時に、「チキンカツカレー」がよく出ていた理由が良く分かった気がした。
    要するに、食材などの高騰で、以前ほどの材料を使って作る事が出来なくなったのだろう。
    それでも、学食ゆえに安価で満足感を出さねばならない……それゆえの「チキンカツカレー」であったのだろう。
    そういう意味では、@420円と5年前と変わらない値段で、同じような「カニクリームコロッケ」を出す事は、無理な仕様になっていたのかも知れない。

    5年と言う歳月は短くもあり長くもある。当然、その中での変化はあって然るべきだろう。それを考えずに年甲斐も無く無邪気にのこのことやって来た自分が愚かであったと言えばそうなのであろう。
    それは、自分の思いを致せなかったミステイクでもあるのだが、それはともかくも、5年前の素晴らしい「カニクリームコロッケ」の印象が強過ぎただけに尚更のショックでもあった。
    中味はクリームだけの、しかし、揚げる技術があるがゆえに、外側の衣は憎いばかりにサクサクのカニクリームコロッケ……
    「価格」と「技術」のせめぎ合いを感じた一幕でもあったが、これは作っている方も、内心忸怩たる想いがあるかも知れぬと言い聞かせている自分がいたりもした。
    前回は、「カニクリームコロッケ」を食べた後に、その勢いでカツカレーを頼んだ自分であったが、今回は、目の前の状態を反芻しつつ、直ぐに食堂を後にしたのであった。

    (左)第一食堂に掲げられ入る立教の旗(中央)第一食堂(右)正門付近にある立派な木



    思えば、5年前にここをくぐり出た時は、幸せに満ち溢れて門を出たものだった。
    5年を経て変わらないものなどはないのだが、この門を入った時に余りに何も変わっていないかの様な光景に、再び美味しい「カニクリームコロッケ」を食べられると思ってもいた。
    時代によって料理は変わる。それは哀しいけれども必定の理でもある。
    また、今度来るときは、世情が変わって、以前の素晴らしい「カニクリームコロッケ」に戻っている事を期待しよう……そんな事を思って、仕事先へと急いだ5月の出来事だったのでした。