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Menu オリエント急行殺人事件(思うに至る)



    2018年の秋、何時もお世話になっている木場のアタゴールに、かのアガサクリスティー氏の曾孫の方がいらしたと言う事でした。
    <<アガサクリスティ氏の曾孫の方の来訪についてはこちら(A ta guele Facebook)を参照>> 

    【アガサクリスティー】と言えば、有名な【オリエント急行殺人事件】に代表されるイギリスのミステリーの女王………
    かたや、【木場のアタゴール】と言えば、【日本版オリエント急行】の車両を使ったオーセンテックなレストラン………
    そして、アタゴールのオーナーシェフである【曾村譲司氏】と言えば【日本人で唯一のオリエント急行のシェフ】………

    そんな素晴らしい重なり合いがあると言う事に触発されて、折角だから【オリエント急行殺人事件】にちなんだ料理を食べてみたいと思いました。

    (左)木場アタゴールオープン時の列車移動パネル
    (中央)イギリス限定版「オリエント急行殺人事件」
    (右)アタゴール店内のオリエント急行パネル




    オリエント急行の料理を食べたい!と言う事であれば、アタゴールのメニューに載っているオリエント急行ゆかりのメニューをオーダーすれば直ぐにでも口にする事が出来ますが、【オリエント急行殺人事件のメニュー】となると構成を自分で考える必要が出てきます。
    【イスタンブル発】→【カレー着】のオリエント急行で起きた殺人事件と言うストーリーに一体何を盛り込むべきであろうか……???
    オリエント急行殺人事件を楽しみながら、オリエント急行に乗って食堂車で食べている様な気分を満喫する様なメニューにするにはどうしようか……
    と考えている内にワクワクして考えた【構想】が以下のくだり。




    ”オリエント急行殺人事件” メニュー案
    (平成30年11月某日)

    ”sultane”を使ったもの(始発駅イスタンブルのイメージ)

    ハンガリーのフォアグラを使ったもの(通過国ハンガリー&登場人物)

    ネギのスープ(言わずと知れた???)

    ”Dragomiroff”を使ったもの(オリエント急行殺人事件の登場人物)

    フリカデル(終着駅カレーのイメージ)

    デセールはお任せ


    上記の内容をベースにアレンジをお願い致しました。

Menu オリエント急行殺人事件 具体的なメニューの構想の趣旨


    【オリエント急行殺人事件】は、豪華列車と言う側面と、始発のトルコのイスタンブルから終点のフランスのカレーまでの長距離を走行すると言う側面から、乗車する人物が限られたそれゆえに独特のキャラが立った人物達が登場する事がこの小説の魅力を増している部分です。
    ですから、「長距離の旅行・停車地」と「人物」と言う両面での特徴が楽しめる様なメニューにしてみたいと考えました。

    ”sultane(シュルターヌ)”としたのは、トルコの首都イスタンブルを発車する列車と言う事で、”トルコ風”のと言う内容を持つ料理が相応しいだろうと。

    ハンガリーのフォアグラとしたのは、作中に登場するハンガリーの外交官夫妻であるアンドレニ伯爵夫妻をイメージして。もちろん、ハンガリー風と言う事で”hongroise(オングロワーズ)”と言う切り口でも良かったのでしょうが、アタゴールで曾村氏のスペシャリテとして登場するフォアグラの一品が美味しかった事もあり、それをアレンジして頂いてみたいなと言う事で、敢えてオングロワーズでは無く、ハンガリーのフォグラアと言う事でお願いする事にしました。

    アガサクリスティと言えば、”名探偵ポワロ”。やはりこの主人公とも言うべき人物にまつわる料理が欲しいと思いました。「ポワロ」と言えば「ポロネギ(poireau)」。非常にベタベタな設定ですが、晩秋から初冬にかけての季節に身体がホッコリとする様な一品として(名探偵ポワロの存在が出てくる事で心がホッコリとする様な意味も含めて)”ポロネギのスープ”を。

    そして、”Dorgomiroff(ドラゴミロフ【公爵夫人】)”。正直、フランス料理のメニュー名にこんな(気の利いた)名前の料理があるとは思いもよりませんでしたが、アガサクリスティのこの【オリエント急行殺人事件】は1934年の発表。太陽の沈まぬヨーロッパのベルエポックが終わり、再び軍靴の足音が聴こえてきた時代でもあります。当然、エスコフィエの Le Guide Culinare にはお目見えせずで、白水社の新フランス料理用語辞典に掲載のものなので、いつぞやから登場した料理名なのかは分かりませんが、兎に角も【オリエント急行殺人事件】の登場人物がしっかりとフランス料理になっていると言う点が面白かったので、是非とも食べてみたい料理でありました。

    物語の終着駅でもあるカレー(Calais)。今では英仏海峡トンネルの大陸側の街であり、昔からイギリスと大陸側との玄関口でありました。しかし、ヨーロッパ大陸側では果てしない主権争いが続いた事もあり、ある時はフランス領、ある時はハプスブルク領と言う風にアチコチに統治者が移動した事もあって、色々な文化圏の食事が味わえる場所でもあります。そんなカレーの名物の一つである”フリカデル(fricadelle)”。こちらはエスコフィエにも載っている一品でしたので、これも組み入れて頂こうと考えました。

    最後に、デセールは、オリエント急行に実際に乗っておられた曾村氏にお任せと言う事で、メニューの素案が完成しました。
    後は、この素案を、a ta guele の支配人市川さんに目を通して頂いて、最終的な内容や仕様は曾村シェフにお任せする運びとなりました。