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神保町:2011年08月25日:学士会館 ラタン


    神保町の古本屋街を散策するついでに時間があれば、良く訪れた場所に「学士会館」があった。
    名前の通り「学士様」専用の施設だったのだが、今は学士様以外にも門戸が開放されている有難い場所でもある。
    (「学士」とは、大学卒の事を指すが、正確に言えば【旧帝国大学の卒業生】を指す言葉でもあった。)
    何故かこの2011年、結構、学士会館に頻繁に通って食事をしているのだが、残っている写真が使えなかったりするので、差しあたって仕えるモノを残しておこうと思う。

    (左)(中央)小海老とアボガドのサラダ(右)パン




    実は学士会館で初めて食事をしたのは、今からそれこそ4半世紀以上も前の事だったのだが、とある仕事関係のイベントの際に学士会館で昼食が出された事があって、その時に食べた「アイスクリーム」が非常に忘れられない味であった。
    今でもその「アイスクリーム」の事は覚えているのだが、【硬く】【密度の詰まった】【バニラアイスクリーム】であった。
    まさしく、【古典的なアイスクリーム】であったのだが、爾来数十年、空気が適度に入った【軟らかいアイスクリーム】に出会う事はあっても、この4半世紀以上前のアイスクリームを超える感動は味わった事は無い……
    と言う、言わば、自分の食事に関わる原風景的なものと絡むのが「学士会館」の食事でもあった。
    そんな懐かしさもあって久しぶりに学士会館を訪れて食事をした際に、そこそこのレベルのものを出していた事もあって、比較的に通ったのだとも思う。

    2011年当時、ランチが@1500円と言う破格な値段でもあって、非常にコストパフォーマンスも良く、かつ満足度も高かったが、上野の精養軒出身の方がシェフを務めているとの事で、なかなか精養軒もあなどれないなと思ったものであった。
    当時のランチの構成として「サラダ」「メイン」「デザート」と言う三点セットのシンプルなもの。
    まず、「小海老とアボガドのサラダ」。
    海老とアボガドと言うある意味定番の組み合わせだが、そこはちゃんとした仕事がされていて、アボガドがしっかりと下処理されていて余計な繊維や、色が変わっているところも無く、ねっとりとしたアボガド特有の感じと、これまた独特の質感の海老とが巧く合わさっていた。
    海老の甘さに、アボガドのちょっと脂肪分のあるコクのある味との組み合わせが、ちょっと暑さがシンドイ8月の終わりに食欲を掻きたててくれる仕掛けで、なかなか嬉しい一皿でした。

    (左)(中央)若鶏のコンフィ(右)紅茶プリン




    メインは、「若鶏のコンフィ」
    何気に学士会館のラタンでは、よく出てくるメニューでもあるようなので、何気に学士会館のスペシャリテなのかもしれませんが、このお値段のランチで本格的なコンフィが食べれるのだから、非常にお得感を感じたりもします。
    今となっては、古臭い料理の一つになった感もあるので、それこそ学士会館の様な伝統あるお店の方が得意にするところなのかもしれませんが、このコンフィの塩加減と脂の抜き加減は熟練の技を必要とします。
    皮に切れ目を入れつつ、ナイフで肉を骨から外しつつ、下にあるドミグラスソースをまぶして行きます。
    コンフィとは不思議なもので、脂を落とした肉と皮にソースの脂と美味しさが加わる事で、また新しい味の領域へと連れてってくれるものだったりもします。
    適度な塩加減と、ソースの甘い部分を肉にまぶしながら食べ進める美味しさは、まさにフランス料理の古き良きものを感じさせてくれるのでした。

    そして、食後のデザートは「紅茶プリン」
    じっくりと煮出した紅茶で作られたプリンは、しっかりとした紅茶の味が行き渡っていて、これだけでここの実力の高さを窺い知る事が出来る位です。
    実は、ここ学士会館の紅茶は「インド政府御用達」の茶葉を使っていると言う事で、そんな事もこの紅茶プリンの味を色濃く出す事が出来ているのでしょう。
    「アボガドと海老」「コンフィ」と来て、最後に濃厚だけれども口をさっぱり、と言う仕掛けが感じられたこのランチに非凡なものを感じた8月の末のことでありました。