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銀座三越:2011年08月28日:レ ロジェ エギスキロール(LES ROSIERS EGUZKILORE)


    フランス国内で初めて女性シェフでM.O.F(Meilleur Ouvrier France)を受賞したアンドレ・ロジェ氏がプロデュースするお店があると言う事を見つけたので、三越銀座の12Fに行って見る事にしました。
    銀座三越の12Fは、空間や採光が日本橋の本店とはまた違って、「銀座のモダン」な感じがします。
    中は、銀座のグランメゾンの様な感じとは違って、白を基調にした明るいお店で、どちらかと言うと普段使いに適しているようなお店でもありました。

    (左)(中央)カトラリーや位置皿(右)前菜の盛り合わせ



    お昼時だったのでランチコースを頼みます。カトラリーのシルバーの色と柄の部分赤い色との対比が日の光にあたってさりげなく自己主張しています。

    料理を立体化すると言うのは、最近の流れの一つかもしれませんが、料理の器自体を立体的にすると言うしつらえは、それこそ、これからの時代はアントナンカレームの時代の様なピエスモンテが流行ったりするのかしらん?とワクワクもしました。

    (左)ソラマメのスープ 他前菜



    前菜を摘んでいる立体の容器から、それぞれの容器がひとつずつ運ばれてきます。
    (興奮して、この時のメニューを忘れた)

    一つ一つの品は丁寧で優しい感じぬ作られているのが、やはりこのお店の白と陽の光の相乗効果もあって、雲の上のテーブルで食事をしている感じさへしておりました。
    フランス料理を食べに行く時は、夜が多い事もあるでしょうし、やはり”ムード”と言う事もあって意外に光を落としている処が多いですが、(三越の12Fと言う事もあってか)開放感のある色調と場所で食事をするのもまた新鮮な気分がします。

    (左)溶岩プレートの上の一つの芸術(中央)パン(左)トリュフの登場



    溶岩プレート上のサラダ仕立てのパテの盛り方に、”岡本太郎”を感じたのはここだけの話ですが、盛り方を見ているとケルト神話?かななどと思わせるような、何か神話的なものがベースにあるような気がしました。

    そんな夢想をあれこれとしていると、白い雲の上に銀色の宇宙船に乗った黒い使者が現れた様です。

    「ワタシを削って宇宙に行きますか?」

    もちろん、”Oui ウィ”の一択であります。

    トリュフの魅力については、古来、様々な人が述べておりますが、それはワタクシメも例外ではありません。
    トリュフそのものに味はありませんが、香りと言う味覚とは違う部分を刺激するところに料理の多重構造をより複雑にしていきます。
    トリュフ使いは、ある意味魔法使いでもあります。

    (左)和牛のロッシーニ



    白い更に盛られた牛とフォアグラの宇宙………それを更なる異次元にいざなうトリュフの使者………トリュフは、異世界への「鍵」なのです。

    厚目に切った牛肉とフォアグラを遠慮なく口に招き入れます………

    「美食なくして人生無し」「フランス料理無くして人生無し」「我が人生に悔いあり(まだ沢山のフランス料理があるので)」


    (左)食後のお飲み物(中央)ミニアチュール(左)コーヒー



    メインをある種の興奮で終えると、うやうやしくサービスの方が食後のお飲み物候補の入った箱を持って来てくれました。
    今回は、白亜と太陽の光で白い世界を旅したので、現実に戻るために「黒い珈琲」を頂きましょう。

    ”悪魔の様に黒く、地獄の様に熱く、天使の様に清く、愛の様に甘くなければならぬ”とこの黒い飲み物を評した人物こそ、美食家として高名なサガン公ことタレイラン。
    ”彼”こそ、まさに”ノワール”を体現するかの様な人物ですが、リアリストとしてナポレオン戦争後のフランスを大逆転に導きます。

    「現実へのいざない」

    ワタクシメ個人は、食後のコーヒーは、それまで魅惑のフランス料理の世界から現実世界へ戻るチケットの様なものと考えていますが、それは、きっと珈琲についてサガン公が述べた事も影響しているのでしょう。

    雲の上のテーブルで、前菜のピエスモンテ風に酔い、溶岩プレートの岡本太郎様(よう)に酔い、ロッシーニに酔う。そして、最後はサガン公に酔い、その言葉で目覚める。

    そんな不思議な天空の場所が銀座三越の12Fにはありました。