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青山:2017年02月27日:ラチュレ(Lature)


    2月になると(冬場になると)野兎が食べたくなると言う何時もの病気が発動する。
    「野兎」を求めて……というわけで、ネットを調べていると、渋谷に野兎が入りましたとのお店を見つけた。
    名前をラチュレ(Lature)と言う。

    (左)青山学院傍のラチュレ(中央)位置皿(右)鹿のマカロン



    ここは、店主の室田氏が自ら狩猟に出て獲得したジビエが食べれる事が大きな特徴のお店である。
    もちろん、お目当ては”野兎”であるから、ジビエの入ったスペシャルコース(14000円)を頼む事にした。

    < メニュー >

    アミューズ:鹿の血を使ったマカロン

    アミューズ:クマのケーキ

    アミューズ:鳩のムース

    前菜:鴨のバロティーヌ

    スープ:高麗キジのコンソメ

    前菜:猪ベーコンの炒め

    前菜:ジビエを使ったパイ包み

    メイン:リエーブルロワイヤル

    デセール:ルバーブ

    プチフルール:クマの脂を使ったフィナンシェ

    (左)クマのケーキ(中央)鳩のムース(右)鴨のバロティーヌ



    メニューは、非常に品数が豊富であり、しかも他のお店では見ない独創的なものも多い。
    特に、アミューズに出てくる「鹿の血のマカロン」などは、室田氏のスペシャリティの1つであろう。ジビエや「血」と言うとそれだけで忌避されるきっかけにもなるだろうが、こういう形で綺麗なお菓子の様な感じだと、第一印象からの避けられると言う事も減ってくるのだろう。
    クマのケーキは、チーズと合わせてあって言われなくては”クマ”だとは分からないだろうし、鳩もこれが最初に説明を受けなければ”ハト”だとは認識が出来ないだろう。

    室田氏の哲学は「命に感謝」であると言うから、本来自然の恵みであるジビエに対して、少しでもイメージが改善して、多くの人が食べてくれる事で自然資源への関心と循環がもたらされる事を念頭においた料理なのだろう。
    氏がジビエポータルと言うサイトで、農林水産省後援のジビエYoutubeに紹介されているのも、その取り組みが評価されているからだろう。

    (左)高麗キジのコンソメ(中央)猪ベーコン炒め(右)ジビエのパテアンクルート



    古典的な鴨のバロティーヌに、ジビエのパテアンクルートなどは、どれも敢然としている。
    雉のコンソメも、雉特有のエッジの効いた匂いを残しつつも巧くエキスが抽出されている。
    猪のベーコンは、トリュフの香りと共に爽やかに口に消えていった。

    (左)リエーブルロワイヤル(中央)ルバーブのデセール(右)クマのフィナンシェ



    そして、本日のメインイベントである”野兎の王家の煮込み風(lievre ala royale)”
    先ずは、正面から古典料理に取り組んだ事に敬意を表したい。野兎の匂い、ソースの濃さ、肉の質感……等々、まさに、某有名骨董家の方の”約束通り”な出来映えである。
    ルイ14世に由来するこの野兎の料理は、まさにジビエの筆頭格(女王)である。そして、この野兎を上手く調理するのは非常に技術と経験が求められる。
    これをいとも簡単にやってしまうのだから、ここのシェフの力量は相当なもの。
    そういう意味で、室田氏は若手の中で、今後の日本のフランス料理を引っ張っていく人物の一人になるのだろう。
    (ベテランシェフばかりで行われる第2回フレンチシェフスペシャリテ倶楽部 特別ディナー(2017年8月27日)に若手で唯一参加されている点を見ても覗える)
    今回、食べたモノは、コースの中に組み入れられた品々で、どれも美味しく頂いた。今後、氏が考える「命への感謝」と言う事とジビエへの取り組みから、どの様な新しいスペシャリティが誕生をしていくのであろうか?
    食べる事にしか能の無い自分などは、”新しい世界を創造できる能力”の持ち主に尊敬の念を抱くばかりである。

    メインを食べた後、美人のパティシエール延命寺美也氏の作るルバーブのデセールを食べ、一息していると、最後のプチフルールにクマの脂を使ったフィナンシェ(クマンシェ)が出された。
    ジビエが身近にあると言う取り組みが実を結ぶ事を切に願う渋谷の晩であった。