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銀座:2018年09月17日:アーブルヴィラージュ(Arbre Village)


    キムラヤと言えば、”あんぱんのキムラヤ”と言う事で、人への進物にあんぱんを買いに銀座へ行く度に入り口の所にあるフランス料理の立て札とメニューが気になっていた。
    ”キムラヤ”だから、洋食ベースなのかしら?と思っていたが、調べてみると、元マキシム・ド・パリの料理長がシェフをしているとある。
    「灯台下暗し」と古人は良く言ったものであるなぁと思い、何とか時間の都合をつけて赴く事にした。

    (左)魅惑の4Fへのエレベーター(中央)山岡鉄舟揮毫の額(右)朝一のアーブルヴィラージュ



    とは言ったものの……銀座の昼間は非常に人混みで、それこそ人疲れしてしまうだろうから、何とか人が少ない静かな時間は無いものか?と一思案。
    「もしかしたら、日曜日の朝一であれば空いているかな?」と言う事で、眠い目をこすりながら銀座の朝一に突撃。

    開店したてのキムラヤは、既に活況を帯びて押すな押すなの人だかりで、奥のエレベーターに辿りつくのも一仕事の有り様で、銀座の一等地の賑わいはさても凄いものと感嘆しつつ目的の場所である4Fを押した。
    4Fに着いて、エレベーターのドアが開くと、直ぐそこはアーブルヴィラージュとなっている。
    開店時間(11:00分)丁度に着いたが、未だ開店と言う感じでは無く、準備中な雰囲気で早く来すぎたのかなと思いつつ、中の人に「入って大丈夫ですか」と声をかけると大丈夫との事だったので、入って席へと案内をして貰った。
    (キムラヤは、明治天皇に元祖あんぱんを献上した事でも有名だが、その間を取り持った侍従の山岡鉄舟の見事な書が飾られている。山岡鉄舟はキムラヤのあんぱんが好きで毎日食べていたと言うくらい気に入っていた。)
    ”一番乗り”と言う事もあって、窓際の眺めの良い一等席に案内をしてもらった。
    窓から見下ろす、まだ喧噪を帯びる前の静かな銀座の日曜日。これだけでも(無理して)早起きをした甲斐があった。

    (左)日曜の銀座4丁目交差点(中央)キムラヤ特製食べ放題のパン(右)ナスとズワイガニのテリーヌ仕立て



    さて、場所も決まったし、山岡鉄舟の書も見たし(写したし)、後は本題であるご飯にとりかかりましょう、と言う事で、メニューを選ぶ。
    メニューは色々とあるらしかったが、マキシム・ド・パリの料理長だった人の料理を味わいたかったと言うのもあり、3800円のコースに+αを払う形での設定にした。
    願わくば「アワビ」を食べたかったのだが、折からの北海道胆振東部地震の影響でアワビの在庫が1個しか無いとの事で、ご一緒した方にアワビを譲り、私自身は牛肉のシャッスールをメインにする事にした。

    << ある日の メニュー(アーブル・ヴィラージュ)>>

    < 前菜 >

    ナスとズワイガニのテリーヌ仕立て
    ou
    甘エビと桃のマリネ

    < スープ >

    茸のポタージュ

    < メイン >

    蝦夷アワビのソテー
    ou
    牛ヒレ肉のシャッスール

    < デセール >

    < キムラヤ特製パン食べ放題 >

    と言うラインナップ。

    (左)甘エビと桃のマリネ(中央)茸のポタージュ(右)追加されるパン籠



    ここの”売り”の一つでもある「キムラヤのパンの食べ放題」
    所謂、惣菜パンは含まれていないものの、色々なパンが食べ放題であるのは、かなり心が緩む。
    「パン」はパンで”ブーランジェ(Boulanger)”と言う事で、本来は別の枠組みだったりする訳で、お菓子職人であるパティシエなどと同じように独立した職域でもあります。
    元々、パンを始め(粉ものは)機嫌を取るのが難しく、有名なレストランに行っても、デセールはともかくもパンは自前で無く外からと仕入れると言うのは割とスタンダードだったりもします。
    ところが、このアーブルヴィラージュは元々がパンのキムラヤですから(実は、この4Fもレストラン木村屋と言うのが旧店名だったりするそうで)、パンに関してはそれこそ一日の長がある訳です。
    そんな老舗のパンにオリーブオイルを付けて、或いは、そのままで、ムシャムシャと食べれるのは結構な幸せではあります。

    (左)銀座4丁目交差点(中央)牛ヒレ肉のシャッスール(右)蝦夷アワビのソテー



    さて、肝心の料理のお味の方ですが、元マキシム・ド・パリの料理長が手掛ける品々だけあって熟練の手運びを感じます。
    「綺麗で」「しっかり出来ている」+「味付けが古典的」
    と言う事で、個人的にはかなり気に入った感じが。

    ナスと蟹と言うのも、蟹を脅かさないようにナスにコンソメの味がなじんでいて、お皿の様に透明感のある味わいになっているのに力量を感じるところ。
    また、甘エビと桃は、系統の違う2つの甘さをマリネで巧く統合している感じがして、これもgood。
    スープである茸のポタージュも、前菜が冷たい系統の料理だったことからホッコリとするような温かさと、味自体がポタージュ仕立てと言う事もあって優しい感じ。
    茸のスープは、茸自体の味が前面に出てしっかりと自己主張した方が良い場合もあるし、アクセントとして控えめな方が良い場合もありますが、今回の場合はトータルとして柔らか目の味付けに軍配があがるでしょう。

    メインのシャッスール(chasseur)は、今となっては古い範疇に入ってきそうなソースですが、”狩人”と言う意味でシャンピニオンをスライスしてバターで炒めてエシャロットと白ワインで煮詰め、バターやエストラゴン等の香草に出汁を加えて煮詰めたソースで、牛肉だけでなく鶏やジビエにも使える優れもののソースだったりします。
    柔らかいけれどもしっかりとした牛肉の歯応えに絡むシャンピニオンのソースの甘いけれども僅かに渋みを感じるのが、森の「木々」の間の花が咲いたり、鳥が飛んだりのちょっとした空間を感じさせてくれます。
    (アワビの方は写真だけ……今度は絶対に食べる!)
    押しなべて、昔ながらの技法で丁寧に作った料理の数々で、きっと何時来ても変わらない安定感があるのだろうなと言う感じを受けました。

    (左)ラギオールのミツバチ(中央)デセールのパンナコッタ(右)珈琲



    そして、最後にデセールのパンナコッタ。上に乗っているアプリコットのゼリーが、ヨーグルト風味のパンナコッタと合わせて(柔らかいけれど)甘くて酸っぱいと言う二層構造でお口直しをしてくれました。
    (ラギオールのカトラリーは何方の趣味かな?)
    外は、どうやら自民党の総裁選か何かで騒がしくなってきた銀座4丁目の交差点のお昼過ぎ。自民党のあさかぜ号がやけに目立つ4丁目の交差点を眼下に眺めつつ、爽やかなキムラヤでの午餐は締めくくられたのでした。