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東銀座:2010年08月18日:レストランkairda


    2010年の夏、非常に暑くて夏らしい夏だった様に記憶している。そんな事もあり、少々馬力を付けたいと思ってネット上を探していると”クマ肉”があると言うブログを見つけた。
    何でも駆除された”クマ”と言う事で早速お店をチェックすると、それはアピシウスを経て独立された皆良田光輝氏のお店だった。
    皆良田氏はご自分でも狩猟をされるとの事だったので、せっかくのなので狩猟に詳しい知人も誘って”クマ”を食べに赴いたのだった。

    (左上)付き出し(左下)魚介類のナージュ(右)ヒグマのステーキ



    皆良田氏の事は、今回の知人の知人がお知り合いと言う事もあった上に、以前、高橋氏(高橋徳男氏)が神田にパ・マルと言うパイ専門のお店を出していた際に良く買いに行っていた事から、最初から話が弾んだ。

    最初に付き出し。アピシウスのオリーブは有名な付き出しだが、この付き出しも適当に酢が効いていて食欲を刺激すると共に、暑さを和らげてくれるので非常にうれしい。
    そして、魚介のアラナージュ(a la nage)。魚介を香草入りの冷たいブイヨンで煮たものをア・ラナージュと言うが、この8月の暑さに見た目も涼しく、コンソメも爽やかに効いていて、これからお出ましになる”クマ”に期待が高まる。
    知人はヒグマよりも”ツキノワグマ”が食べたい等と言っていたが、なかなか最近はツキノワグマを獲ると言うのは難しいと言う話をしている内に皆良田氏がクマのお皿を持って来てくれた。
    茶色いソースにネギが生え映えとしている中に、あの獰猛なヒグマが何とも優しい色合いで置かれていて、クマを象徴するのは上に載っている”黒いトリュフ”くらいな上品な一皿が登場した。
    何気に「鹿」や「イノシシ」に比べると上品な味のクマであったが、やはり季節外れと言う事か、個体そのものが人里に出てくる様な状態と言う事もあって空腹な状態が続いていたか、それ位クセの無い味で、ソース自体がジュをベースにしていたが、上品な仕立てになっていたので、見た目の茶色さとはうって変わってあっさりしたメインであった。

    しかし、こうなると逆に食欲に火が付くし、皆良田氏の料理ももって食べてみたいと言う事もあり、続いて「仔牛」と「ウズラ」をオーダーする事にした。
    (件の知人も同じく触発されたらしく、追加オーダーに大賛成であった。)

    クマを食べた後に仔牛ですか?と半ばあきれ顔に皆良田氏は厨房に入って行った。

    (左)仔牛のクリームソース(右)デセール



    「出来ました」と皆良田氏が再び厨房から持って来てくれたのが、仔牛のクリームソース。

    すなわち、blanquette de veau (ブランケットドヴォ∸)と、これまた嬉しいお料理を。
    当たり前と言えば当たり前だが、グランメゾン出身だけに古典的なフランス料理も造作無く料理してしまうのが流石の一言。
    たっぷり目のソースに入っているトリュフも非常に泣かせる。先ほどのクマが上品な感じの一皿だとすると、次のこの仔牛もどちらかと言えば淡白な味系であるが、トリュフの効いたソースとやはり古典的な調理法として長く料理になっているだけに無理が無いと言う事を再確認。

    ウズラもファルシー仕立てで、中にたっぷりのウズラのミンチが入っていて非常に満足度が高かった。
    (が……何故かウズラの写真が開けず……今回は割愛いたします。)

    呆れる皆良田氏を横目に、知人とまだいけそうな感じがするねぇなどと話しつつ、流石にいけないね?と言う話をしてデセールに移る事にした。

    まるで、トゥーウランドットを想起させる様なお皿にデセール色々で、これで「ヒグマ」も「仔牛」も「ウズラ」もしっかり収まったね!?などと何も知らない人様からしたら異様な会話してあっと言う間に平らげてしまった。

    お勘定を済ませ、帰りがけに、また皆良田氏が念を押すようにクマを食べた後で、仔牛とウズラを食べる人(達)を見たこと無いですと言われて、「じゃぁ、今度は更にステーキでも追加しようかしらん?」と答えたら、勘弁してくださいと笑われてしまった。
    とにもかくにも、真夏の”クマディナー”の一コマでありました。