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日比谷:2014年07月18日:アピシウス(Apicius)


    諸事で忙殺されていた2014年、漸く、一息つく間も生まれたので、やっぱり美味しいものを食べようと言う事で、斯界の名門、アピシウスに行く事にしました。
    アピシウスは、故高橋徳男氏を初代料理長として、フランス料理業界に「美食の殿堂」として欲しいままにしているグランメゾンであり、舌も目も肥えた経験値豊かな同上貴顕が集う特別な場所でもあります。

    (左)蚕糸会館にある入り口(中央)位置皿(右)付き出しのオリーブ



    日比谷から少し入った区域にあるアピシウス。
    賑やかな日比谷とは同じ地区でありながら少し空気が違うのは、かの第一生命ビルが近くにあるからでしょうか。
    日本の政治経済の中枢を担う永田町・霞が関に近く、多くの日本を代表する企業の本社が置かれている地域とも言える日比谷。
    このアピシウスは開業以来、日本の政治経済に関わる重要な決定に至るプロセスを幾多に渡って垣間見てきたのでしょうか?
    政治家・官僚・財界人……この日比谷に存在できる人々は、今をときめく力と立場のある人達が集う場所でもあります。
    そして、当然、その様なエネルギー溢れる人達は、それに応じた食事を好ませたもうもの。
    だからこそ、アピシウスが、単に美食と呼ばれるだけでは無く、力強い、エネルギッシュな人々を魅了して止まない料理を世に送り出して来たのでしょう。

    (左)海の幸のモザイク仕立て(中央)キューブ状のパン(右)新鮮なバター



    前菜は、「初夏の海の幸のモザイク仕立て、オレンジ風味のパプリカのクゥーリ」

    オレンジの味とパプリカが夏の暑さを払ってくれる、見た目にも涼しげな一品。

    アピシウスは、料理の豪華さ美味しさでも有名な処でもありますが、その人材の層の厚い事でも注目すべき場所でしょう。

    2代目料理長の小林定氏は、茗荷谷で、レゼールデカーをアピシウス出身のお弟子さんと共に。
    高橋徳男氏の元でスーシェフを務めた荒山浩之氏は、蔵前でビストロモンペリエを。
    同じく、高橋徳男氏の元で働き、高橋氏のテイクアウト専門のパ・マル、六本木のレストランパ・マルの双方でシェフを務めた皆良田光輝氏は、東銀座でレストランKAIRADAを。
    同じく、高橋徳男氏の元で働き、根津を経て銀座でフランス料理銀座誠を開いている栗原誠氏

    等々、綺羅星の様な人材を輩出してます。

    (左)ビーフコンソメ(中央)フォアグラのサンドウィッチ(右)タラバ蟹のパートブリック包み焼きと真蛸のベニエ



    さて、次のお品として「ビーフコンソメとフォアグラのサンドウィッチ添え」が運ばれてきました。
    口に入れる程に溶けるフォアグラの甘さがまるでお菓子の様ですらありますが、フォアグラの存在を確かめる様にビーフコンソメを飲むと、フォアグラとコンソメの双方が浮かび立つ様な味の組み立てが見事です。
    その組み立ては、美食家である「アピキュウス」に恥じない素晴らしものであります。

    そして、メインである「蟹のパートブリック」に続きます。
    今回は、この蟹と、「国産和牛頬肉のブレゼ ピストゥ風、夏野菜グリエ添え」との選択だったのですが、夏場の気怠さゆえ、ピストゥ以外の調理法に興味がいってしまい、「蟹」の方を選択した次第。

    夏場ゆえ 海の香りの タラバ蟹 その美味しさを 閉じこめんとす

    (左)シャリオデセールから(中央)アイスクリーム(右)マルクス=ガヴィウス=アピキュウス



    地下の洞窟で、爽やかな海の香りを楽しむイタリア貴族の様な趣向に満足して、次は、お楽しみのシャリオデセール。
    要は、デセールをお好きなだけというわけで、贅沢な食事の締めくくりは、やはり甘いものが必要だと思う。
    「檸檬パイ」「プディング」「桃のタルト」「タルトタタン」「アイスクリーム」………

    古のアピキュウスは、莫大な財産があるにも関わらず、これでは大した贅沢も出来ぬと此の世に別れを告げた御仁でもあるが、ワタクシメの様な軟弱な輩は、そんな財力も無いし度胸も無いので、到底アピキュウスの足元にも及ばない訳であるが、やはり歴史に名を残す御仁は普通の感性とあ違うモノを持ち合わせていないと難しいのだろう。

    (左)理科実験の道具の様な(中央)ハーブティー(右)その日のメニュー



    「人がなぜ美食を追い求めるのか」と考えれば、それに満足に解答するだけの答えを持ち合わせていないだけでなく、それを考えるに足りるだけの頭もないのだが、地下の洞窟でイタリア貴族の様な気分を満喫しただけに分かる事は、”美食が人生だから”と言う事だろうか?
    哲学的な問答を聴くと眠くなる自分は、ますますもってイタリア人のアピキュウスに笑われてしまいそうでもあるが、それが俗人の俗人たるのゆえんと言う事で、イタリアが誇る偉人であるこの日比谷のグランメゾンの神に御許しを願おう。