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グランメゾンテャリティカレー:2013年11月17日第06回:アピシウス


    グランメゾンの行う、チャリティカレーも震災後6回目を数える。
    一年に2回のペースではあるが、あの大震災から3年も経過したのかと思うと月日の流れをいたく速く感じる。
    前回はレカン→アピシウスと2軒巡りをやったが、今回は早起きの友人と都合がつかなかったのでアピシウス一軒だけに絞っての参加であった。

    (左)(右)アピシウス個室の内装(真ん中)通常のアピシウス入り口



    今回は、前回の様に梯子をしないのである意味気楽であったが、しかし、やはりこのイベントに”待ち”は付きものである。
    アピシウス近くに到着すると、既に列をなしており、やっぱりこの調子だと1時間は待つかと言う具合で、適当に携帯を弄りつつ入場を待つ。
    ”ゴドーを待ちながら””待つ身は長い”と言うパタリロの台詞を思い出しながら、むべなるかなと思いつつ、こんな時、待つために何か食べものを用意しておくべきだったか…などと思うのは、我ながら心弱気モノだなと思いつつ、待ち続ける。
    そんな自問自答をしながらも、列に身を委ね、ようやく美食の門へと到達する。
    入り口まで来たら、意外と早い。これは多分に気持ちの問題の様な気もするが、目の前に”具象化されたモノ”があるだけで人は心安らぐのであろう。
    果てさて、そんなこんなとしている内に、お決まりのウェイティングスペースのオブジェを見て、ブルーデルの彫刻を愛で、今回は(普段)個室として使われているお部屋へ。

    第六回目のアピシウスは「岩手短角牛のビーフカレー」



    岩手短角牛(短角種)が注目され出したのは、丁度1995年位だったであろうか?その初期の頃、ラビーナスの大渕シェフが短角種を素材で使うことに力を入れていた様な記憶がある。
    短角牛は、和牛の代名詞とも言える”霜降り肉”にするのではなく、そのままの状態でしっかりとした肉質自体を食べると言う事が狙いの牛である。フランスで言うところのシャロレー牛に近いと言う感じであろうか。
    岩手県の緯度はフランスの緯度よりも低いが、少々寒い気候や、北上盆地の地形などがフランスに似ている様な部分もあって、フランスの牛と似たような質の肉が出来るのであろう。
    もっとも、このチャリティカレーの注目すべき点は、チャリティの金額云々と言う事ではなく(もちろん大事な事ではあるが)、東京のグランメゾンの様なお店が東北の素材を使って行く事で、「素材」と「人」との交流から経済的な循環の道筋が作られて、長い目で見ての復興に資する働きに結び付くと言う点は非常に重要な点であろう。

    さて、短角牛のカレーのお味であるが、贅沢を言えば、もう少し短角牛を厚目に切った方が良かったかもしれない。
    写真でも十分に厚いので、アピシウスは本当に奮発しているなと思うのだが、要は肉の切り方と言う部分だろうか。どちらかと言えば、カレー仕様でトロトロとなっているので、口に入れた瞬間に溶けていってしまうのである。
    そういう意味では、少々易きに流れる感じではあるが、”サイコロ状”の方が、もう少し短角牛の良さが前面に出て良かったのではないだろうか?
    これは好みの問題でも(そもそも1000円で食べれる事だけでも奇跡なので、それに対して云々かんぬんを言う事自体がナンセンスなのだが)あるし、あくまでも”願望”と言う類の与太話になるわけだが、土台、ソース(カレー)自体が良いので、短角牛が溶けて行く前に短角牛の味を捕まえておきたいと言う”贅沢な”願望でもある。
    まぁ、通常のアピシウスであればこんな制約はないのであろうから、ふんだんに贅沢な”厚み”でもって肉を出すと思うのだが、その点はあくまでもチャリティでもあるから致し方なしと言う事であろう。
    要は、ただでさえ美味しい物に対して、少々わがままを言ってみた……と言う走り書きである。