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グランメゾンテャリティカレー:2013年05月19日第05回:アピシウス


    今回は朝に強い友人が助っ人に加わってレカン→アピシウスと2軒巡ると言う事をしてみたアピシウス編である。
    レカンで食べてからダッシュして並ぶも(この時はそんな元気がありました。)、移動で10~15分前後はかかる(タクシーも考えたが、道によっては交通規制とかでとんでも無く遠回りになりかねないので断念)中、何とかアピシウスに到着。
    着けば、長蛇の列でパレスホテルの方にまで人が並ぶ有り様で……この状況で売切れとかなったら目も当てられない等と少々ドキドキしながら並んだ。
    それでも並び時間は1時間位であったであろうか。
    ようやく、アピシウスの入り口が見え、地下へと続く階段をゾロゾロと降りながら、独特なオブジェの飾られているウェイティングスペースを通過して、広間へ。

    (左)第六回目のアピシウスは「南部高原豚のカツカレー」(中央)アピシウス入り口のロゴ(右)アチャール風の酢漬けと胡椒のソース壺



    さて、待つ事暫し……
    やはり、カツカレーと言う事ゆえ揚げ物の宿命として、テーブルに座ってハイどうぞと直ぐに出てくるものでもない。
    その間、アチャール風の漬け物を食べて心と身体の準備をする。
    (アチャールとはインドの漬け物。玉ねぎ他各種野菜の酢漬け。)
    これが、また美味しいので非常にムシャムシャやってしまうのだが、何より先にレカンで食べているのもあり、丁度良いお口直しの感じ。
    つまらない話だが、他の人に運ばれてきたカレーの匂いとカツの香ばしい匂いが何よりに嫉妬を欠きたてる瞬間、それがこのウェイティングタイムでもある。
    そんな食いしん坊の万感の想いを込めて、漸くカツカレーがお目見え。
    揚げたであろう、カツの衣に薄っすらと油を感じながらさっくりとした衣の下に控える豚肉の味………
    その後に隙間を埋める茶色くサラサラではあるが、決して粘度を失っていない出汁を伴ったカレーの味。
    どうしても揚げ物を使うと、その油の力と食材の味とが相克する場面が出てくる。
    これを巧くすれば逆に美味しいものとなるが(「天ぷら」はその例であろうが)、それは腕と経験が無ければ難しい。
    それをサラッとやってくるアピシウスの力量は流石のグランメゾンの力であろう。
    いや、まったくこんな美味しいカツカレーがあったであろうか?イヤ無い!!
    これがグランメゾンの力か……と素直に思えるような素晴らしいカレーであった。

    そもそも、グランメゾンのカレーが1000円と言うのは破格の値段であろう。本来ならばグランメゾン(に限らず、フランス料理店全般)でカレーを作ると言う事は(余り)無い。
    それは、カレーがフランス料理店に似あわない大衆的な料理だと言うわけでもなく( a la indiと言うインド風と言ったり、ジョージ7世風と言ったりでカレー自体がフランス料理にもしっかり存在している)、どちらかと言うと”その匂い”が問題と言う点だろう。
    カレーの匂いは、ある意味強烈でもあるから、他の料理を台無しにする事もあるし、その匂いが食器やお店、調理器具に付くと料理自体が当初考えていたものと違うものになってしまう事になるから。と言うのが大きいと思う。
    (後は、お客さんの洋服に匂いが付くと言う事もあります。)
    お客の側からすれば、元来はあり得ない事であるからこその貴重な体験であるが、本来味わうべきは、単に美味しいという事だけでなく、通常ではやらない事であるからこその店の覚悟と度量を味わうという事でもあろう。