LINEで送る このページを Google Bookmarks に追加

2010年09月23日:某氏誕生会 【オマールのパイ包み】@レストラン KAIRADAA

    先日、パ・マル仕込みの牛肉のパイ包みに舌鼓みを打ってご満悦だったワタクシですが、以前、パ・マルのパイとスープをお土産に差し上げた方にその話をしたところ、是非そのお店で、パイを食べてみたいと言う話になり、折角なので誕生会を行う事となりました。
    その方は、ワタクシ以上にフランス料理のお好きな方で、「オマールのパイ」を食べたいと言う事と、持っているクラブデトラントの本に載っている「ショーフロワ」を食べてみたいと言う事だったので、皆良田氏にお願いしてみる事になったのでした。
    諸事相談の上、9月の下旬にレストランKAIRADAに赴いたのでした。

アミューズ



    最初のアミューズとして、エイの煮凝り風を。
    エイのほぐし身に、あっさりとした煮凝り風のジュレを纏わせたアミューズが、今回の晩餐への想いを高めてくれます。
    エイと言うと、どうしてもお酒のおつまみと言うイメージがありますが、上品に香り付けされたエイが独特の匂いを和らげてフランス料理のアミューズに深化しています。

前菜:羊肉のショーフロワ”



    当初、皆良田氏に相談した際に、「クラブデトラントに載っているショーフロワを……」と言ったところ、「菅沼さんに作って貰ってください」と言われたのですが、「菅沼さんとお知り合いではないので」と言う事を言って無理をして作って頂きました。
    「クラブデトラントの本」と言うのは、故高橋徳男氏を始め、井上旭氏(Chez inno)、など1980年代から90年代にかけて日本のフランス料理の黄金時代を築き上げた方達の集まりで作られた本の事で、参加された方々のスペシャリテと共に作り方も惜しみなく書かれていて、見る方からすれば、こんな大御所級の方達の素晴らしい料理の数々が見れるなんて眼福・眼福と言って、ワタクシも持っている本の一つでした。
    今回、ご一緒した方もフランス料理への造詣が深く、このクラブデトラントの本の物を食べてみたいと言うのは、十分に分かる事でもあったし、何よりも自分も食べてみたいと思ったので、何とか皆良田氏にお願いをした……と言う訳だったのです。

    球体の物体にかかるショーフロワソース
    かつて宴会では良く見られた技法の一つであり、Chaud(ショー:冷たい)、Fruid(フルワー:温かい)と言う不思議な表現をするソースですが、単純に言えばゼリーを塗ってコーティングすると言う料理になります。
    滑らかで不思議な光沢を持つソースが、ゼリーを含むものだと言うのは、まさに古人の知恵でしょう。
    綺麗であるし、更にソースの美味しさも閉じ込めておける。そんな素晴らしい古典的な料理がいつしか消えていってしまったのは非常に残念な事でもありました。
    今回、縁あって誕生会と言う席ではありましたが、目出度く陽の目を見る事になって、ご一緒した私も今となっては幻の?料理を頂く事が出来て大変幸せてありました。
    球体の中には、羊の旨味がうずくまり、外を更にコンソメのゼリーでコーティングしたショーフロワーソース
    外を取り囲むのは、桃とさやいんげんの付け合わせ。

    バブル期の華やかなりし頃のフランス料理は、かくも力強いのか?と思わせる一品でありました。

メイン:オマール海老のパイ包み





    さて、お次は、本命の「オマールエビのパイ包み」
    観ての通り、サクサクのパイ生地を開けるとオマールがこぼれ出す。ソースはオマールを使ったアメリケーヌソース。
    思えば、パイ包みもショーフロワも、元々の素材の旨さを閉じ込めつつ、更にソースの美味しさを足していくと言う非常に贅沢であるし、理に適った料理法であるなぁと。
    オマールの身の甘さに、小麦粉の甘さ、アメリケーヌソースの甘さの三重奏です。
    甲殻類独特のクセを、いかに美味しくするかは腕の見せ所です。下処理が悪いと直ぐに匂いがきつくなるのが甲殻類の難しいところ。せっかくの甘い豊かな味が匂いで相殺されるのはとても残念な事になってしまいます。
    もちろん、今回のオマールは、そんな事の無い素晴らしいものでした。
    丁度良い頃合いのパイ生地の皮のサクサクした歯応えと感触を楽しみつつ、アメリケーヌソースをたっぷりと浸して食べて行く……それは、まさに至福の一時でもありました。
    残しておいた、オマールの右の爪を食べ、最後に残ったパイ皮をソースで掬って食べ終わり、何でもう少し無いのかしら!?などと欲張りな事を言いつつ美味しいオマールはゴソゴソと我々の胃袋へと入っていきました。

本日のサプライズ:オマール海老の人形 皆良田風




    メインも終わり、主賓のご要望も無事に叶える事が出来て次はデセールというところで皆良田氏からのサプライズが登場します!!
    Happy Birth Day の旗を掲げたオマールのコックさんが入場です。
    Happy Birth Day to you !! Happy Birth Day Y.Y.Y !! Happy Birth Day to you ♪♪♪


オマールエビが立っている!!
しかもコックコートを着て人形になっている!!

    実は、今回のショーフロワ事を相談する際に、もう一つお願いをしていたのでした。
    今回の主賓の方とお話をしている際に、持っている本が良く被っていて、先ほどのクラブデトラントの本もそうでしたが、(奇遇にも)帝国ホテルの本も同じ本を持っていて、過去に何度か「そう言えば、オマール海老の人形みたいな細工が可愛いよね」と言う話をしていたのでした。
    ですので、何とかならないかな?と思いつつ、今回の食事の相談を皆良田氏にお願いをする際に”出来たら”と言う事でお願いしたのですが、こんなに素晴らしい形で作ってくださいました。


    (左)帝国ホテルの本 (中央)かつて帝国ホテルのメインダイニングで出されたオマール海老の人形 (右)2010年の皆良田氏のオマール人形


(世界で一点の)贅沢なプレゼントだなぁ♪
しかも、この瞬間だけの作品……まさに料理と同じだね!!

    かつて帝国ホテルではこの様な飾り物が添えられて料理に出されていました。
    これは、昔の勢を凝らした予算に糸目をかけない宴会料理の一コマなのでしょう。
    大の大人を含めて、こんな可愛らしいオマール海老の人形がサービスをしてくれたら、それだけでその日の食事の思い出として語り継がれる事と思います。
    もちろん、「料理」が美味しいと言う事が一にも二にもですが、しかし、こんな一品があるだけで場の空気や雰囲気は増幅されるのです。
    昔の人は、その人情の機微というものを良く分かっていたのでしょう。
    そして、この皆良田氏製作の「オマール海老のコック」。帝国ホテルバージョンと同じではあるが、同じではない。皆良田氏独自の創意も入っているのが素晴らしく(ペリエの瓶で土台が作られている)、改めて、料理人と言うのは、並大抵の技術ではなりおおせないものだな、と思いを新たにする瞬間でもありました。

食後のプチフールとコーヒー



    こうして、大きなサプライズを伴った某氏の誕生会は感動の中でデセールを迎えて、目出度く終了に向かうのでした。

Bon anniversaire !! (ボナニヴェルセール)